中山眼科クリニック

白内障

主治医の一言

白内障手術は手術時間が短く、注射もしなくてよい、日帰り手術ができる、等のことから、「白内障手術は簡単だ」と安易に考えられている傾向があります。実際、白内障にはさまざまな種類と程度があります。手術の一連操作には常に高い集中力と高度な技術が求められます。決して簡単にできる手術ではありません。手術はかなり安全になったとはいえ、まれに眼内レンズ挿入不能、術後眼内炎、駆逐性出血など、予期せぬ出来事がおこることがあります。
手術を受ける前に起こりゆる合併症について、主治医によく聞くことが大切です。

白内障とは

白内障とは、目の中の水晶体という部分が白く濁ってきてものが見えなくなる病気です。
昔は「白そこひ」とも呼ばれ、失明率の高い病気でした。

原因と種類

白内障はさまざまな原因で起こりますが、最も多いのは、年をとるにつれて水晶体が濁ってくる老人性白内障です。白髪や顔のシワと同じようなものです。初期の白内障は自覚症状は乏しく、日常の生活に支障をきたすことは殆どありません。
その他、全身疾患に伴う白内障(アトピー、糖尿病)、併発白内障(ぶどう膜炎)、ステロイド性白内障(ステロイド剤の長期投与)などがあります。

症状と治療

症状:かすんで見える、二重三重見える、眩しくなる。
初期の白内障治療法として、いくつかの点眼薬、内服薬などが使われていますが、これらの薬はあくまで白内障の進行を遅らせることであって、濁った水晶体を再び透明にすることはできません。病状が進行すれば、手術することになりす。

手術の時期

物が見えにくくて、これでは困ると思った時が手術の時期です。
例えば、自動車の運転をする人は、免許更新が出来なくなれば手術しなければなりませんし、細かい文字が読めなくなったら、手術を考えてみる時期でしょう。瞳が白くなってしまうまで手術しないでおくと、他の病気(ぶどう膜炎や緑内障)が起こることがあります。また、眼底の様子が分からないので眼の内部の病気になった時、手遅れになる心配があります。
さらに片方の眼が見えないまま放っておくと、斜視や弱視になることもあります。

手術の方法

基本的に点眼麻酔、小切開、無縫合の方法で行っております。
角膜を2~4ミリ切開し、濁った水晶体を超音波で細かく砕いて吸い取ります。水晶体の後ろ膜を残し、そこに眼内レンズを埋め込みます。手術そのものにかかる時間も15分ぐらいで、高齢者の負担はずっと少なくてすむようになっています。特殊な症例や全身状態の悪い方を除いて入院は必要ありません。

当院手術の特徴

無縫合、小切開の手術方法はいくつかあります。
当院は一番習得の難しいプレーチョッパ法を採用しています。手術の時間が短いだけではなく、術中の侵襲も少なく、術後の視力回復も早いなどの利点があります。

視力の回復

小切開創白内障手術の進歩によって、術後視力の回復は早い時期に可能になります。仕事の復帰や運動に関してはその都度主治医と相談してください。
術後2週間~1カ月程度で視力は安定しますが、乱視や遠視、近視、左右のバランス等の個人差があり、その人のライフスタイルに応じて、眼鏡装用による微調整が必要になることがあります。
尚、他の眼疾患(重症緑内障、ぶどう膜炎、眼底出血、網膜疾患、角膜混濁、変性近視、弱視など)がある場合、術後視力の回復に限界があります。

眼鏡の必要性

一般的に手術と同時にピントを合わせるため、眼内レンズを挿入します。しかし、現在の眼内レンズの基本は単焦点レンズで、つまり見える範囲は限られています。遠方に焦点を合わせると近くの物はぼやけて見えます。近方に焦点を合わせると遠くの物はぼやけて見えることになります。また、眼内レンズ度数の測定誤差がでることがあります。従って、手術後に物をはっきりと見るためには、眼鏡で微調整する必要となる場合は少なくありません。
最近、眼鏡装用を減らすため、多焦点眼内レンズがありますがこの点について、多焦点レンズの項目にご参照ください。

手術の合併症

嚢胞様黄斑浮腫(CME):術後炎症反応が起こり、黄斑浮腫を誘発し、一時的に視力低下が起こります。CMEが発生すると1~2か月間視力が低下しますが症状のきつい症例に対し眼球のうしろに特殊なステロイド剤の注射を行います。
感染症:手術にさいしては、感染予防に万全の処置を行っても、ある一定の頻度(約1/2000~2500例)で感染症が発生します。不幸にも感染症に罹った場合でも、早く気づき、早急な治療を行えば、殆どの症例は完治できます。そのため、術後に視力がよくても、主治医の指示に従って定期的に診察を受けることは大事です。
眼内レンズ挿入不可:現在の技術では、99%以上の確率で眼内レンズの挿入は可能です。しかし、水晶体が非常に硬い場合や、水晶体を支える組織が痛んでいる場合は標準的な方法では、眼内レンズを挿入できない場合が少なからずあります。手術の状況によっては、一旦眼内レンズの挿入を行わず、日を改めて、眼内レンズ縫着(二次移植)を行うことになります。

後発白内障

白内障の手術で眼内レンズをいれるとき、水晶体の一番外側の膜(後嚢)を残して、その中に眼内レンズをいれます。通常は後嚢は透明ですが、手術後時間が経つにつれて、次第に濁ってくることがあります。濁りの度合いにもよりますが視力低下が生じれば、治療をします。それは再手術ではなく、外来で特殊なレーザー(ヤグレーザー)を使って後嚢切開し、濁りを飛ばします。治療時間は短く、痛みもなく、レーザー後の生活制限もありません。

多焦点眼内レンズ

主治医の一言

多焦点眼内レンズは白内障術後に「眼鏡に依存しない生活」を送りたい方はいい選択肢と考えております。生活スタイルにもよりますが日常生活の大部分は眼鏡がなくても不自由しなくなります。しかし、眼鏡が全く必要なくなるという訳ではありません。術後満足度を高めるために手術する前に主治医とよく相談して、自分に一番合う眼内レンズを選択することはとても大切です。

眼内レンズの種類

眼内レンズはピントが1つの単焦点とピントが複数ある多焦点の2種類があります。
単焦点レンズは一つの焦点しか合わないため、遠方も近方も両方の距離がくっきり見えるという訳ではありません。近くに焦点を合わせた眼内レンズを入れた方は、遠方を見るときに、遠距離用のメガネが必要になります。遠くに焦点を合わせた方は、手元の文字を読む時に、近距離用のメガネが必要になります。
一方、多焦点眼内レンズは一枚のレンズの中に遠距離、近距離など複数の焦点が合うように設計されます。多焦点眼内レンズを使用することによって、眼鏡なしでおおむね、遠方・近方が見えるようになります。

眼内レンズの種類

多焦点眼内レンズの特徴

多焦点眼内レンズは従来の単焦点眼内レンズに比べ、遠くにも、近くにも眼鏡なしで焦点が合いやすくなるため、メガネをかけたり、はずしたりする回数が減ることで、活動的な生活を送る一助となります。しかし、若い頃のように、見たいところに焦点を自由に合わせられるわけではないので、完全にメガネから解放されるという訳にはなりません。位置により見えにくい場合は、眼鏡で微調整することになります。

多焦点眼内レンズの特徴

手術の適応

多焦点レンズの適応症はいくつかの条件があります。強い乱視、角膜疾患、眼底疾患、視神経の異常等のある方は多焦点眼内レンズに向きません。手術を受ける前に屈折値、角膜、網膜・視神経の異常の有無、瞳孔、白内障の状態等を精査し、総合的に判断しなければなりません。多焦点眼内レンズを希望された場合でも、目の状態の診断結果によって選択できない場合もあります。そのときに従来の単焦点レンズをお勧めします。

手術の適応

手術方法と合併症

多焦点眼内レンズによる白内障手術は通常の白内障手術と同じです。角膜の周辺部に小さな切開を加えて、濁った水晶体を砕いて取り出し、多焦点レンズを眼内に挿入します。しかし、ごく稀に、眼内レンズを支える水晶体が入っていた袋(水晶体嚢)が何らかの原因で術中に破れることがあります。これを後嚢破損といいます。おおきな後嚢破損が起こった場合は、手術前に予定していた眼内レンズを挿入できないことがあります。その時に単焦点レンズに切り替えるか、眼内レンズを入れないかについて、安全性を考慮しながら医学的に判断します。また、単焦点レンズと同様に後発白内障が起こることがあります。

術後の見え方

多焦点レンズは一枚のレンズに複数の焦点を組み合わせて設計されているため、光学上、光を分散することは避けられません。それが原因で単焦点レンズに比べて、多焦点レンズはピントがやや甘い、術後、強い光を見た場合に光を眩しく感じたり(グレア)、光の周りに輪がかかって見えたりすること(ハロー)が起こりやすくなります。個人差はありますが大半の方は手術後の時間経過とともに症状が改善されます。また、単焦点レンズと比べて、クッキリ感がやや落ちる可能性もあります。夜間の運転を頻繁に行う場合は注意が必要です。

矯正誤差

眼内レンズの度数はコンピュータにより、計算して決めますが乱視や目の状態によって、測定誤差が完全になくなることは大変難しく、術前予想よりピントの合う位置に多少ばらつきが生じます。また、多焦点レンズによる白内障手術は、調節力を回復させることができません。手術後は遠方、近方共に良好な視力が得られますが手術前と同様に手術後も年齢と共に目の状態が変化しますので、後に眼鏡が必要になることがあります。つまり、多焦点眼内レンズを使用することによって、日常生活の大部分は眼鏡がなくても不自由しなくなりますが個々の生活のスタイルによって眼鏡を使った方がよい場合もあります。

単焦点レンズと多焦点レンズの比較


単焦点レンズ 多焦点レンズ
焦点 一カ所 複数
ピントの合う範囲 狭い 広い
微調整用メガネの必要性 高い 低い
くっきり感 よい やや劣る
グレア・ハロー 少ない 多い

単焦点レンズと多焦点レンズの比較

手術費用

多焦点眼内レンズは健康保険が適応されませんので、片眼の手術費用は 300,000円(税別)となります。上記費用には、手術日から白内障手術後3ヶ月までの手術料、眼内レンズ代、お薬代と診察代が含まれます。術中に医学的な判断で単焦点レンズに変更される時、或いは眼内レンズを入れない場合には保険診療に切り替えます。それまで受けられた診察・検査代の差額分は精算します。

眼内レンズの歴史

1750年以前 カウチング法-硝子体内へ水晶体を落下させる方法
1750~1949年 角膜輪部から水晶体を全摘する方法をDr.Davielが考案
古典的な嚢内手術
第1期 1949年 嚢内摘出法後後房レンズ(Ridley Lens)を挿入する方法を英国のDr.Ridleyが考案
世界初のIOL挿入
第2期 1953~60年頃 Ridley Lensは挿入が難しかった為、
前房レンズを嚢外摘出、嚢内摘出後に隅角固定
第3期 1950後半~70年代 虹彩支持型レンズ登場をDr.Binkhorstが考案
第4期 上記同時期 支持部角度を改善し、現在の有水晶体前房レンズの前身となるレンズをイギリスのDr.Choyceが考案
第5期 1978年 後房レンズをDr.Shearingが発表、嚢内固定が安全性高いとのエビデンス
1970年代以降 KelmanによるPEA開発より、後房レンズが定着
2000年以降 PEA機械の進歩。無縫合、耳側角膜小切開、chopper/pre-chopper法が考案
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