網膜剥離とは、網膜に穴(裂孔)ができて、その穴から眼内の水が網膜下に入り込み、網膜が本来の位置から剥がれてしまい視力が低下する病気です。両方の眼で物を見ていると片方の視力が低下していても異常に気が付かないことがあります。
網膜裂孔(網膜剥離の前段階)のみの場合は、網膜レーザー光凝固術を行います。レーザー凝固術とは、網膜裂孔周囲にレーザー光を当て、瘢痕を作り、裂孔を閉塞することです。レーザー治療自体は10分程度で、あとは通院治療となりますので患者さんの負担を著しく軽くします。既に、網膜剥離を起こしてしまった場合は、入院しなくては手術できません。手術そのものも大がかりになります。治療が遅れると病状をこじらせますので、やはり早期発見、早期治療が一番大切です。
また、網膜剥離となる原因は、他に糖尿病網膜症、ぶどう膜炎等があります。このような場合は原因となっている疾患の治療を行います。
糖尿病にかかっても、すぐ目に異常をきたすわけではありません。糖尿病と診断され、網膜症が出てくるには数年から10年くらいかかることが分かっています。網膜症は早期に発見し適切な治療をすれば、病気の進行を抑えられる確率が高くなります。
重篤な糖尿病網膜症になって、失明したり失明の危険が迫っている患者さんは、全糖尿病患者さんのうち20%くらいと推定されます。
病気の進行は前期(単純期)、中期(前増殖期)、後期(増殖期)の3期に分かれています。
前期の時は、特に治療する必要はありませんが、中期になると病状進行を防ぐために、レーザー光凝固術の治療が必要になります。この時期を逃さないことが治療のポイントとなります。レーザーを受けたからといって視力が良くなることはありません。しかし、網膜症の進行をくいとめるための最も有効な方法です。
後期になると硝子体出血網膜剥離をおこします。こうなると失明の危険性がありますので、手術が必要になります。手術によっておよそ80%が治りますが、完全な視力の回復は難しいのが現状です。
また、網膜症以外にも、糖尿病白内障、新生血管緑内障、眼筋麻痺といった合併症が糖尿病にはあります。糖尿病といわれたら、症状の有無に関わらず定期的に眼科の診察を受けてください。
高齢者に多い病気ですが、加齢に伴う動脈硬化が進行すると、硬くなった動脈が静脈を圧迫して静脈の血流を遮断したり、部分的に閉塞したりします。時間が経つと末梢の静脈圧が異常に高くなり、その流域の網膜に出血が起こります。
危険因子には、緑内障、糖尿病、高血圧、血液疾患などが挙げられます。
血管閉塞の部位で網膜中心静脈閉塞症と網膜静脈分枝閉塞症に分類されますが、血管閉塞と網膜の中心部(黄斑部)に及ばない場合は無症状であることも多いです。黄斑部に血管閉塞が及びますと、黄斑浮腫、黄斑出血が生じますので、視力が著しく低下します。治療はまず、網膜循環改善薬や血管増強剤の内服を行い、病状の改善が見られるかどうか経過観察します。出血や浮腫は十分に消褪しなければ、レーザー治療を考えます。
レーザー治療の目的は、急性期では、網膜出血や網膜浮腫の吸収促進による病期の短縮で、陳旧例では、新生血管の増殖変化や緑内障の予防および抑制です。すでに黄斑部(視力の中心部)に出血や浮腫がある場合は、視力予後は良好とはいえません。また、レーザー治療後に中心視力が回復した場合でも、ある程度の変視症(物がゆがんで見える)や、網膜感度の低下(比較的暗く見える)が残ることもあります。原因によって、しばしば再発することもあります。定期的に眼底検査が必要で、内科的に異常がないか調べることも大切です。
黄斑上膜とは黄斑部の上に膜ができて、黄斑部を引っ張る病気です。この膜が収縮することによって、黄斑部に皺(しわ)を作ることがあり、物が歪んで見えたりします。病状が進むと視力低下が生じます。
黄斑上膜の原因は様々ですが最も多いのは硝子体に変性が起こって、硝子体が網膜からうまく離れていかなくて、黄斑上膜を作ってしまいます。その他、外傷、ぶどう膜炎など眼の中の炎症が原因で網膜上膜ができることもあります。
黄斑上膜は目薬や飲み薬では効きません。症状のない方は特別な治療は必要ありません。視力低下やゆがみの強い症例には手術を行います。また、黄斑上膜は自然によくなることもありますが症例によって黄斑部に強いしわ・浮腫・円孔を作ってしまうことがありますので定期的に経過観察をすることはとても大切です。
黄斑部の中心に円形の穴ができ、視力低下を招きます。黄斑円孔の程度にもよりますが一定の割合で視力が保つこともあれば、0.1以下に視力が落ちることも珍しくありません。また、液化した硝子体がこの穴から網膜の下へ入り込んで網膜剥離を誘発するもしばしば見られます。網膜剥離になると手術をしなければなりませんし、手術をしても中心視力の改善は見込めないこともあります。発生頻度は中年の女性が多く、眼球打撲による症例も見られます。
網膜色素変性症とは網膜にある視細胞が、年齢よりも早く老化し機能しなくなってしまうため、夜盲や視野狭窄、視力低下が生じる両眼性の病気です。通常は若年成人の頃に発症しますが、他の年齢層で発症することもあります。遺伝性のものが最も多く、また、網膜色素変性症を持つ人の子供や孫が網膜色素変性症に罹患する確率は、遺伝形式にもよりますが多いものでは50%の可能性があります。現在のところは治療する方法がありませんがiPS細胞技術の進歩によって、近い将来に治療方法が期待されます。
目の前を小さなものがチラチラして、ちょうど蚊が飛んでいるように見えるのを、飛蚊症と言います。これは、実際に細かいものが目玉の中に浮いて動いているのです。
その原因は色々ですが、多くの場合は硝子体剥離(しょうしたいはくり)といって、硝子体という目玉の中身が、そのすぐ外側の網膜から離れてしまったのです。
硝子体は、ちょうど卵の白身のような透明なものです。この硝子体は、誰でも年を取るにつれて縮もうとする傾向がありますので、硝子体剥離は大変多いものです。ただ大抵は硝子体と網膜はうまく離れて、真ん中の取り付け部分だけが分厚いので、明るいところではその影が自分に見えて、チラチラするだけで済みます。これは何も害がありません。
ところが100人に数人位、硝子体が縮む時、網膜からうまく離れないで、網膜の一部を引きちぎる事があります。洋服の鈎裂きのようなものです。これを網膜裂孔(もうまくれっこう)といいます。網膜裂孔をそのままにしておくと、網膜剥離(もうまくはくり)という大変怖い病気になりやすいのです。従って飛蚊症が出てきたときは、網膜に穴があいてないか、詳しく調べる必要があります。